(憲法記念日に寄せて)全国大学の法学部の皆さんへ (2006年5月3日)
―「共謀罪」の危険:「治安維持法」の復活を許してはならない―
悪名高い「治安維持法」が施行された1925年から1945年にかけての日本は、法治国家であることを完全に放棄しました。
この法律は事実上、検挙と有罪とを直結させ、警察・検察の狙い通りの結果を実現させることが立法の目的であり、そのように法文が整備され、運用面では、多数の獄死者が出る過酷な拷問を常態化させる道を開いたのです。
したがって、この法律を根拠に検挙された多数のケースに対して、手順としての法廷は開かれたものの、弁護士や裁判官は実質的に何も手出しができず、ひたすら魂を持たないロボットの役割に徹するしかなかったのです。
そのような彼らの、胸中を察してみてください。また、職務に忠誠を誓った警察官や検察官の本心をも。
これと同じことを、日本に再現しようとする動きがあります。いま政府・与党が国会に提出している、いわゆる「共謀罪」がそれです。
正式名称は「犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処するための刑法等の一部を改正する法律案」で、もともとはマフィアなどの「越境犯罪」を防止する国際条約がすでに締結されており、それに対応する国内法を整備するものであると説明されています。
しかし、この法案は、このような法律を創設しなければならないような国内事情(立法事実)がないことを法務省が法制審議会で明確に認めている一方で、適用対象を国内の一般人に拡大して、憲法が保障する基本的人権、思想および良心の自由、集会・結社・表現の自由、そして通信の秘密などを、実質的に骨抜きにしようとするものであることは明白です。
したがって、法案自体が明らかな憲法違反なのです。
具体的には、「共謀罪」は、2人以上で犯罪の実行を話し合い、合意すれば、そのこと自体を犯罪として扱うとしています。犯罪が実行されなくても処罰の対象となる点で、これまでの刑法とは決定的に違います。
近代の刑法は、犯罪の意思だけでは処罰せず、具体的に加害の事実が現れて始めて処罰の対象にすることにしています。つまり、「行為」があって始めて犯罪が成立するというのが刑法の大原則です。
しかも、「共謀罪」は、対象とする犯罪が500以上もあり、「当事者の合意」という客観性のないものを処罰の対象としており、同時に当事者のどちらか一方でも、自首したときは刑が減免されることになっているので、恐るべき事態が起こることが予想されます。「治安維持法」時代の社会状況の再現です。
「共謀罪」では、人々の会話や電話、そしてメールの内容そのものが犯罪になりうるので、犯罪捜査の名目で電話やメールの盗聴や傍受、また通信記録などの閲覧、そして市民団体へのスパイの潜入が常態化するでしょう。実際に、この法案には既に、それを容易にするような条文を、巧妙に潜り込ませてあります。
密告が奨励され、陰湿な監視社会が現実のものになることでしょう。
そして、最後の決め手は本人の自白しかないので、拷問やそれに近い密室での悪行が、必然的に増えてくるでしょう。
拷問によって、あるいは長期の留置や勾留による心身の疲労から、心ならずも「自白」したかもしれない被疑者を、弁護士としてのあなたが、どう弁護できるか考えてみてください。
組織を挙げて「共謀罪」に反対している日本弁護士連合会の平山会長は、「共謀罪」のケースは、「どんなに優秀な弁護士でも弁護できない」と話しています。
何らかの形で法曹の世界に関わっていこうとしている、あなた方の勉学の意義と将来の進路にとって、絶対に軽視することのできない問題が目前にあるのです。
単に刑法や刑事訴訟法の領域だけのことでなく、先人が営々と築いてきた、法の基本精神や法体系を完全に破壊しようとするのが、この法案の本質です。法治国家の根幹を揺るがす問題です。
したがって、あなた方の専攻が民法や商法、あるいは政治学であっても、決して看過することはできないはずです。
ぜひ級友の皆さんと、あるいは指導教官を含めて、この問題に対して、あなた方として何をやるべきかを話し合ってください。
いま何も行動しなければ、悔いを千載に残すことになるでしょう。
※
既に国会で2回廃案になっているこの法案を、性懲りもなく提出してくるのは、例の「9.11」以降にブッシュ政権によって喧伝されてきた、「テロとの戦い」の余熱が冷める前しかチャンスがないとみているのでしょう。
その意味で、この法案は、根っこにおいてブッシュ政権の命運だけを頼りにするものとも言えます。
しかし、「9.11」や「テロとの戦い」のすべてが、ブッシュ政権の作為による虚構であるとしたらどうでしょうか。
よく使われる手法ですが、恐怖心を煽るのに最も有効な方法は、「狼少年」本人が、密かに「恐怖の出来事」を引き起こすことです。
今や、「イラク侵略」の虚構は、全世界で周知の事実になっています(ちなみに、アメリカのメディアが当然のように「イラク侵略」と呼称するなかで、日本のメディアだけが「イラク戦争」という曖昧な言葉を使っています)。
一方、すべての状況の出発点になっている「9.11」の「化けの皮」も次第に剥がれて、「公式発表」の対極をなす新たな共通認識が形成されようとしています。
彼らの企画は、粗雑そのもので抜け穴だらけなのです。
それは、マス・メディアの完全支配を確信している彼らの傲慢が生んだものでしょうが、現代では、情報を伝えるのはマス・メディアだけではありません。
例えば、次のサイトで、ワールド・トレード・センター(WTC)第7ビルの崩落のビデオを見ることができます。
http://www.wtc7.net/videos.html
ここで、誰の目にも明らかなことは、この鉄筋コンクリート造りで矩形のビルは、崩落の直前には、完全な姿で立っていることです。
それが、上部の均整な形状を保ちながら地面に吸い込まれるように降下していき、わずか6秒半で、47階の全体が地面上に姿を消すことです。
このような作業は、大型のビル解体で使われる、各階の構造上の急所に爆薬を仕掛け段階的に爆発させる「制御破壊(controlled demolition)」以外の方法で行うことは不可能で、そのための準備には数週間かかるとされています。
「同時多発テロ」の攻撃を受けたその日のうちに、周囲一帯が封鎖され第7ビル自体も一部で火災が起こってるなかで、仕掛けを造って解体させることなどありえないことは明白です。
そして、WTC全体のオーナーであるラリー・シルバースタインが言う「彼ら(ニューヨーク市消防本部)」が、消火活動の一環として、急遽それをやるのも考えられないことです。
おそらく、この作業を請け負ったのは、その名も「制御破壊インコーポレーティド(Controlled Demolition Inc.)」でしょう。何故なら当社が、WTC全体の残骸の処理(いわば後工程の作業)を一手に請け負ったからです。
ちなみに、第7ビルにはCIAやFBIも入居しており、また23階には(こうした事態に対処することを名目にした)ルドルフ・ジュリアーニ市長が約17億円かけて構築したとされる「市長の危機管理オフィス」がありました。
したがって、「解体」の実行には、少なくともラリー・シルバースタインに加えてジュリアーニ市長(次の選挙に立候補せず引退)の承諾があったはずで、それは、当初からの計画の一部だったのでしょう(そうでなければ、これだけ重要な機能を持つビルに、あらかじめ爆薬を仕掛けることなどありえないことです)。
また、実際に飛行機が衝突した第1ビルと第2ビルの、ほとんど同様の垂直な崩落も、連続的な爆発音を聞いたという消防士たちの証言からみても、「制御破壊」によるものである可能性が濃厚です。
以上は、いわゆる「同時多発テロ」をめぐる壮大な陰謀の、氷山の一角です。
遠からず、すべてが白日の下に曝され、司直の手で裁かれる時が来るでしょう。
表面から見えるところでは、この問題を、適正な法的手順で裁きの場に持ち込むことのできる人物は、パトリック・フィッツジェラルド特別検察官です。
アメリカの各州には、市民の選挙によって選ばれる「独立検察官」の制度がありますが、連邦のレベルでも、特定のテーマについて、政府に従属しない「特別検察官」を連邦議会が指名することがあります(これに関連して、すべての人が一度は見るべき映画は、オリバー・ストーン監督の『JFK』です。ビデオやDVDを借りることができます)。
フィッツジェラルドが議会から付託された事件そのものは、「CIA秘密工作員の身分漏洩事件」とでも言うべきものです。
これは、サダム・フセインがアフリカからウランの大量購入を図っているというブッシュ大統領の発言に対して、ウイルソン元大使が、そういう事実はないと否定したことが発端です。
これに対する報復として、政府筋が、元大使夫人のバレリー・ウイルソンがCIAの工作員であることをメディアの一部の者に暴露したのです。
2005年10月に、フィッツジェラルドは、2年間の捜査の結果としてルイス・リビー副大統領首席補佐官を起訴しましたが、捜査はまだ継続しており、次の標的はカール・ローブ大統領政治担当補佐官だと噂されています。
しかし事態は、こうしたレベルを超えて進行しているようにみえます。
高潔で鋭敏な感性を持つフィッツジェラルドが率いるチームが、リビーやローブを焙り出しただけで事件を終息させるとは、到底考えられません。
そもそも、与えられたテーマの本質の部分を、徹底的に追求するのがフィッツジェラルドのやり方なのです。
事件の背後にある、いまや明々白々の虚構を、彼が見逃すことはありえないことです。
実際に、フィッツジェラルドの調査が、あまりにも広範にわたっていることに危機感を抱いたブッシュ政権は、あらゆる手段を使って彼の名誉を傷つけ、その地位から引きずり降ろすことを画策してきましたが、ことごとく失敗に終わっています。
今やアメリカの心ある人々は、落ちるところまで堕ちたアメリカの信用を取り戻し、近代世界が模範としてきたアメリカ建国の理念を回復する仕事をフィッツジェラルドがやってくれるに違いないと、期待を込めて見守っているようにみえます。
ブッシュ政権がどんな策を弄しても、政権の座に居座り続けることが出来なくなる日は遠くないでしょう。
そして、その日から、この世界は、目が眩むような速度で変わっていくでしょう。
過渡的な混乱はあるにしても最終的に、隠蔽と欺瞞、そして武力が世界を支配した時代は終息するでしょう。
パトリック・フィッツジェラルドが合衆国憲法とその精神を守ることに命を懸け、「誰もが法を守る義務を負い、法に守られる権利を持ちます」「すべての市民が、アメリカの価値に誇りをかけてこの道を進むべきです」と話すのに対して、日本の政府・与党が、憲法を骨抜きにすることに腐心することの、隔たりの大きさを考えてみてください。
ともかく私たちとしては、目先にある「共謀罪」を、廃案に追い込むことに注力しなければなりません。
これを推進している閣僚や官僚、与党の議員たち、一部のマス・メディア、そして「有識者」たちの氏名に付いてまわる不名誉を、末代に残さないようにしてあげるためにも。
《本質的な自由を手放して小さな一時的安全を買う者は、
自由も安全も受けるに値しない。― ベンジャミン・フランクリン》
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