誤解の多い「塩」について
森下自然医学メールマガジンからの抜粋です。
我々が、日常摂取している塩は、日光、空気、水、土などと同様に生計活動の支えとして欠く事のできない物である。
食品の数は多いが、塩気の入らぬ食品は、ほとんどないといってもよいほど。
即ち、それほど塩は、我々の生理作用にとって重大な意義をもっていると言うことだろう。
塩が絶対不可欠の物であるのは、我々の体が塩類代謝の正常を進行の上に、初めて生命活動をスムーズに営めるように造られているからだ。
我々の体液や血液に塩分が含まれているのは、原始生命が海から生まれそしてそこで育まれてきたためだ。
細胞は、常に一定の塩分を含んだ水に浸されていなければ生きられないと言う宿命を背負っているのである。
すなわち、細胞が生命活動をおこなう際には、必要な浸透圧が一定に保たれていることが不可欠な条件で、その適度な浸透圧を維持するために、カリウム、カルシウム、マグネシウム、鉄鋼などと共に塩分(ナトリウム)が一定の濃度で含まれていなければならないのだ。
例えば、ナトリウムが異常に増加すると、そのナトリウムが体内に水分を引きつけるように働くので、体内の水はだぶつき気味となる。反対に、ナトリウムが減少すると、水分の排泄は促される。このように、ナトリウムの増減に伴ない、体の中の水分は増減する。
もちろん、このような水分の移動はナトリウムの作用だけによるものではない。
ナトリウムと拮抗的に働き、水分代謝に重要な役割を果たしているのは、カリウムだ。
結局、ナトリウムとカリウムのバランスがとれていることが、脱水や浮腫をおこさず、正常に生理作用を進行させる条件となる。
そして、この他の微量成分も、互いに微妙をバランスを保つことによって体液の性状を生命活動にとって好都合な状態にしているのである。
<ミネラルを含む塩が必要>
ナトリウムを始めとしたすべてのミネラルは、新陳代謝作用に伴ない、体外に排出されていく。
したがって、適宜食物として補足しをければならない。
その代表的を供給源の一つが食塩なのだ。
我々の生理にとって望ましい自然塩は、海水を濃縮結晶させてつくる。
それは、ナトリウムと塩素が主体となって、カルシウムやマグネシウム、カリウムと各種ミネラルが抱き合わせにしたものだ。
詳しく成分分析してみると50種以上の物質で成り立っているもので、その様な自然の複合物質であるからこそ、我々の生理機能に対して有効に働くのである。
「食塩の必要量は、一般に言われているよりもかなり多いもので、一日当たり約30グラム(日本人*¹)〜15グラム(外国人*²)である。」
*¹:腸の経路が長い草食民族、*²:腸が短い欧米の狩猟民族
もし塩分不足になると、食欲減退をはじめ、胃液が十分に作られなくなったり体の組織の調節機能が乱れ、炭酸ガスを肺に運び戻す働きがうまくいかなくなったり、神経や筋肉の活動が正しくおこなわれなくなる。
即ち、体の生理機能が順調に進行しなくなるのだ。
食塩水(リンゲル液)を瀕死の病人に注射すると、活力が喚起されて、回復の転機となる事もあるのは、食塩が人間の生理の死生を制する働きをもっている事実を物語っている。
なお最近、ミネラルが欠乏した塩による障害が激増してきている。
例えば、現代の若者たちが、全般に身長は著しく伸びたのに、内臓や骨組みがひ弱で、抵抗力の弱い体となっているのが、そのよい例だ。
その他、現代人の心身に現れている障害の多くは、極度に精製された塩の害によるものとみなしてよい。
その一つは、赤褐色の髪が多くなり、若白髪や若ハゲも増加していること。
このような頭髪の異変はミネラルを含まない精製塩の引きおこす異常の典型で、血液及び体液中のミネラルの組成が混乱した為、体全体のミネラル代謝が狂い、頭部皮膚の生理が異常となったもの。
そして、そのミネラル代謝の失調は、頭髪の異常にとどまらず、もっと深刻な障害を引きおこす。即ち、ガンをはじめ肥満、高血圧などの疾病の原因となり、頭脳活動も著しく阻害される。
<塩の生理作用と役割>
では、食塩は我々の生理機能上どのような役割を果たしているのかといえば、一口でいうと、新陳代謝作用の主導権を握っているのである。
我々の健康障害は、いずれも新陳代謝の異常によって引きおこされる。
ガンさえも例外でなく、新陳代謝の異常が、血液の酸毒化をもたらすことによっておこることを考えても、食塩の重要性は理解できるだろう。
塩分は、新陳代謝の正常化という作用を介して、血液を浄化し、血液本来の機能を強化する。そのほか、唾液、尿、胆汁の中にも含まれ、各組織の活動を支えている。特に胃液では、重要成分である塩酸を構成している。
また、塩は、血管壁に沈着した鉱物質を排除し、血管の硬化を防ぐ。
同様に腸壁に沈着している鉱物質を溶解し、腸の蠕動を高めると共に、消化液の分泌を助け、腸内の異常発酵を防止する。
その為、食物の消化吸収を妨げる条件が除かれる一方、毒素の吸収が防止されるので、消化吸収が速やかになると共に血液が浄化される。
従って、病人や虚弱者、とくに胃腸の弱っている人は、生理的な意味での良質(純粋の意味ではない)の塩を不足しないように補給することが重要である。
血中の蛋白質の一部は、塩と結合することによって蛋白質がすぐに全身の組織細胞で活用されうる溶解状態でいながら、腎臓膜で「こされ」たり、他の組織において「漏れこぼれたり」しない状態に保たれる。
このことから、極端に塩分を制限した食生活をおこなっていると、著しい体の衰弱を招くけれど、その際は塩分の欠乏が、体蛋白の減少(こされたり、漏れこぼれたり)を招くことも重要な要素となっていると考えられる。
食塩は、粘膜や皮膚を刺激して、粘膜の分泌を促したり、その部分への血行を増大させたりする。
その為に、適度な塩気を含んだ食品が、唾液や胃液の分泌を盛んにし、食欲をそそるのである。
反対に塩分を含まぬ食品は消化が遅く、胃中に停滞しがちで消化不良の原因となりやすい。
また、食塩には強い殺菌力、防腐力もある。
傷口に食塩をぬることにより、化膿が防げるし、特殊な例では、食塩の投与で、ひどい急性肺炎を一夜で解熱させたり、どんな治療も効果のなかったアメーバー赤痢を治したりした例がたくさん報告されている。
人間は半ば腐敗したようなものでも食べて平気でいられるのは、一つには塩の殺菌作用のおかげだ。塩は、少しぐらい有害物質や細菌が発生・侵入しても、それらの害作用が組織細胞に及ばぬよう、防衛してくれているのである。
我々の体には、くまなく塩分がゆきわたっている。いわば、適度な塩漬け状態にあるといえる。
<適量とることが重要>
以上のような様々な有効作用が得られるのは、食塩を適量に用いた場合であり、いかに生理作用に不可欠を食品とはいえ、摂り過ぎは害となる。
害作用を生み出す原因として、まず刺激性の強いことがあげられる。
この刺激性が、薬として奏功する場合もある訳だけれど、味覚が麻痺して塩味に鈍感にさせやすい。
そうなると塩の多食に陥り、老化の有力な原因となる動脈硬化を引き起こす。
これは特に塩に含まれる非生理的夾(きょう)雑物が、物質を収縮硬化させる性質をもったためだ。この性質は弛暖した組織を引きしめるためには有効だが、過剰になると血管の柔軟性をそこねてしまう。
しかし、塩を多食しても、速やかに排出してしまえば、比較的害は少ない。
運動、発汗、呼吸、入浴などは、塩分の排泄を促す条件であるので、体をよく動かし、汗を流す機会の多い人は、食塩を多くとってもよいわけだ。
ただし、汗をかいた折に水や清涼飲料水をガブ飲みして、かえって塩分不足による害を招くことが多いので注意が必要である。
このことからも解るように、塩分の必要量は、生活条件によって大きく変わるので、一概に1日何グラムと定めることはできない。
いずれにしても、塩は生理の自然からいってそれほど多量に摂れるものではないのに、実際には、塩害による障害をおこしている人もいる。
このような場合には、塩分の摂り方を工夫する必要がある。
食塩そのものとしてではなく、極力、味噌や醤油などをとるとよい。
これらに含まれる塩分は、カドがとれて刺激性はうんと弱められている。
逆に脱塩状態にある人も、味噌や醤油を積極的に摂って、塩分補給をはかる事が重要だ。脱塩状態に陥るのは、白米、野菜を中心にした誤った菜食をおこなっている陰性体質者に多い。
つまり、塩分過剰の害を恐れるあまり、塩分の摂取を必要以上に抑える習慣がついてしまっているのである。
だが一定の塩分をとることは、血液性状を正し、細胞の質をしっかりさせ、体力を強化するために不可欠であることを知らねばならない。
<質の良い塩をとる>
食塩に含まれるナトリウムと塩素以外の物質を総称して夾(きょう)雑物、俗にニガリと呼んでいる。塩は、ニガリの含まれるおかげで食品として塩特有の風味が生じ、我々の生理作用にも有効な働きをする。
が、ニガリの含有量の多過ぎる食塩は有害であり、様々な障害を引きおこす。
その最も特徴的なものは、腎臓病。そして、組織全体が荒らされる。その結果、早熟・早老の運命をたどることになろう。
粗悪な食塩は、物質を過度に硬化緊縮させる性質を持ち食物中の蛋白質と固く結合して消化・吸収を妨げると共に、胃や腸の内壁に作用して粘膜組織を損傷し、腎臓機能を滅弱させ、頭の働きを悪くする。
ニガリの含有量を適正にし、生理作用に対する有害性を最小限に抑えた食塩を使用しなければならない所以(ゆえん)である。
結局、良質の食塩とは二ガリの害がなく、各種ミネラルをほどよく含んだ塩化ナトリウムといえる。
以上のように、ニガリの含有量の多過ぎる食塩が有害なら、極端に精製した物も有害である。
白米や白砂糖を見ても解るように、白くすることで天然の食品に含まれる有効成分はほとんど失われてしまう。
食塩の場合も同様で、ほとんど塩化ナトリウムだけになった物は、もはや食品とは呼べない。
このような精製塩は、細胞を必要以上に興奮させ生理作用を根底からゆさぶる。
現在一般に売られている食塩は、塩化ナトリウム99.9パーセントと極度に精製され、ほとんど化学物質と化している。
そのような塩が作られるのは、それが近代化学工業の基礎物質として必要欠くべからざる物になっている為だけれど、それを食品としても使わされるのではたまらない。
最近、食塩による健康阻害が大きな問題となってきたのも当然のことだ。
こんな時代であるからこそ、食品としての塩、即ち自然塩を確保する事を真剣に考えなければならない。
食塩の質の良否は、体質の良否と深くかかわっており、健康、寿命を支配するものだからである。
<主な塩の種類>
■天然塩
天然塩は、「海塩」と「岩塩」の2つに大別されます。
【海塩】
天日塩(天日干しで塩を作る。)
平釜塩(天日干しの途中から平釜で煮詰める。)
【岩塩】
岩塩、湖塩(岩塩は、言わば“塩”の化石です。)
【精製塩】
主にスーパーなどで販売されています。
ラベルをみてみると「塩化ナトリウム99%以上」と書かれています。
精製塩は、1971年(昭和46年)、海の汚染や低コストを理由に、塩田を廃止して、元々、砂漠地帯の海水淡水化や工業用の塩を作るための技術だった、「イオン交換膜透析法」を全面導入し、「塩業近代化措置法」を発令しての国策で製造が始まった塩です。
これにより純度99%を超える塩化ナトリウムが「食塩」として定着してしまいました。海水には約60種ものミネラルがありますが、この製法では完全に排除されていて、これは「塩」ではなくただの塩化ナトリウム(化学物質)にすぎません。
【再生加工塩(再製加工塩)】
再生加工塩は、主に輸入した高純度の原塩またはイオン交換膜法により作った塩を海水で溶解加熱した塩で、その際ミネラル分が失われ、辛味が強くなるので、にがりやミネラルを加えて成分調整を行っています。
後から、にがりやミネラルを加えているのに、「自然塩」として販売されている事が多いのも不思議です。
(自然塩という言葉の定義は今のところ曖昧で、にがりやミネラルが含まれていればOKとされています)
再生加工塩は、ピンクやオレンジなど、白色ではないものが多い。
なぜ色がついたかといえば、塩以外の成分が混ざったからです。
珊瑚の色だったり、釜のサビだったりします。
(以上)