足摺トオルマ洞門

「足摺トオルマ洞門」は、春分・秋分を中心として前後3日、計7日間にかぎり

日没時の太陽光線が長さ約80メートルの洞門に射し込み、

内部および反対側の海面を照らすという世界的にも珍しい「遺跡」です。

今回(200692122の両日)その様子を観察するとともに、

地元の友人・知人の協力を得て、この洞門が自然の海蝕洞門かどうかを

確認するために予備的な調査を行いました。

 

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・足摺岬周辺で見られる自然の海蝕洞門

 

下の写真でA(白山洞門:はくさんどうもん)は、陸続きの島の中央部に洞門があり、陸側の砂浜に洞門を通る波が打ち寄せる特異なものです。

またBは、足摺岬灯台のほぼ真下にあります。

@             A(白山洞門)      B             C

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・「足摺トオルマ洞門」の特徴

 

「足摺トオルマ洞門」は、上記のような明らかに自然に形成された「海蝕洞門」とは違う、ユニークな特徴があります。

1. 春分・秋分を中心として前後3日、計7日間にかぎり、(西の水平線近くの空が晴れていれば)日没時の太陽光線が長さ約80メートルの洞門に射し込み、洞門内部および反対側の海面を照らす。

2. 洞門から見ると、この時期の太陽は(海中には沈まず)洞門の約2キロメートル西にある「臼碆(うすばえ)」の山頂(123.5m)に正確に沈む。これによって、(西の空が快晴に恵まれた場合)沈む瞬間の太陽光線は約3度の角度で洞門の西側入口に射し込むので、東側出口の海面を照らす「最長光跡」は常に一定の長さに定まる。

3. 洞門東側の形状は矩形に近く、(海中部分も含め)縦横比が[4:1]に近い極端な縦長になっている。また、波の打ち寄せる方向に対して直角に、洞門の全長約80メートルが直線状に形成されている。

 

・観察と調査の結果について

 

2006921日夕刻)---洞門に光は射し込まず

16:42:06(洞門と東側の入江、遠方に臼碆の山) 17:22:33          17:37:55

 

2006922日朝)---至近距離からの洞門の調査

8:09:12(洞門東側入口)  8:21:00(洞門東側の入江)

 

2006922日夕刻)---洞門に光が射し込む

  17:42:35(明るさの最大)   17:44:03(光跡の最長)   17:47:18(雲にかかる太陽)  18:58:22(山頂に沈む太陽)

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9月21日は、上空は晴れていたものの西方に雲があったため、洞門に光が射し込む現象は起らず下調べに終わりました。
しかし9月22日には、洞門に射し込む光を十分に観察することができました。ただし水平線付近に雲があったため、可能性としての「最長光跡」に達する前に光は消えました。逆にこの雲のお蔭で、臼碆の山頂に太陽が沈む状況をうまく写真に収めることができました。

一方、洞門東側(光の出口)付近の調査では、水深が満潮を約2時間過ぎた時点で3〜4メートルあったので、泳いで洞内を観察しました。

波静かな洞内は、何種かの色鮮やかな熱帯魚が棲みついており、他にはフグが1匹のみ。漁期に入ったばかりのイセエビは、ここでは見られませんでした。

洞内の海底や壁面、そして天井部分は、一見したところ自然のもののようで、現代人が考えるような「人工」の痕跡は見当たりませんでした。

しかし上記した3点の特徴と、洞門全体としての矩形の形状は、あまりにも「出来過ぎ」の印象が強く、次のような推測もできるでしょう。

当初、ほとんど完全な矩形に造られた洞門が、永い歳月のあいだに「水平土圧(*)」によって、洞門の構造上の弱点や岩質の軟らかい部分に、周辺の岩石が押し出されて、現在見られる形状になった可能性があるかもしれない(上に掲載した洞門東側入口の写真をご覧ください)。

実際のところ、この付近の岩層は、多数の洞門の形成が示すように、かなり脆弱な岩質のものです。
いずれにしても現時点では、この洞門が自然のものか人為的なものかについて、確言することはできません。

(*)水平土圧:トンネルの側壁や道路の擁壁などの設計・施工で考慮するべき重要な要素で、周辺の土石の重みによって水平方向に働く力のこと

 

ちなみに、この場所では、太陽がもう少し南寄りに沈み、水温と気温との差が大きくなる冬季には、次のような「だるま夕日」も見られます。

http://pmkujira.sakura.ne.jp/sozai/umikabeG/D4/Da3-1.jpg

 

・他の地域での類似の事例

 

春分・秋分や冬至など、年間の特定の時期に限って光が射し込む遺跡の例は、日本では上掲の「金山巨石群」が代表的なものですが、海外の代表的なものとして次があります。

下のリンク(URL)をクリックすると、関連する写真が見られます。

 

1.Newgrange(ニューグレンジ)の冬至(前後2日を含め、5日間)

2005年は天候が悪くてその現象が見られず、2004年以前の写真があります。

http://www.knowth.com/winter-solstice.htm

2.Loughcrew(ラッククルー)の秋分(および春分)

この秋のホットな写真が見られます。

http://www.knowth.com/loughcrew-equinox-sept06.htm
http://www.shadowsandstone.com/gallery/1920106

 

以上の遺跡は、いずれもアイルランドにあり、炭素年代測定法などによって5千年以上前のものとされています(「石器時代」の人たちが、GPSを使って設計・建造した?)。

 

「足摺トオルマ洞門」の名称について

この洞門の正式名称は今のところ確定したものがないようですが、新たに命名するとすれば、印象的で覚えやすく所在地を広くアピールできるものが望ましいでしょう。

足摺は、「足摺宇和海国立公園」の足摺側にあることを意味し、「足摺岬」「あしずり港」「足摺スカイライン」など、この地域の総称として全国的に知られている名称です。

一方「トオルマ(通る間)」の本来の意味は、(岩礁の間を縫って進む)舟の通り道のことで、地元では、岩礁が多い洞門西側の地名です(東側は「サカマ」と呼ばれます)。

しかし、「トオル」と「光が通る」とのゴロ合わせで覚えやすく印象に残りやすいので、洞門自体の名称として既に一部で使われています。そこで、ここではこの名前を採用することにしました。

 

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