グローバリゼーションの陥穽

「グローバリゼーション」の掛け声のもとに、「アメリカ基準」の押し付けがまかり通り、それを各国の、特に日本の行政が無批判に受け入れる。この状況の根底に何があるのか、じっくり考えてみるべき段階に来ています。個人がやれば確実に自己破産に繋がる、赤字国債の濫発政策を次々と打ち出すような、狂気とも見える現在の事態の「作成」に、マスメディアが深く係わっていることに、お気づきでしょうか。

大量消費、大量廃棄を特徴とするアメリカ経済の本質は、地球からの「収奪経済」です。その一端は、貯蓄率の異常な低さや国際収支の巨額の赤字に現れています。地球環境の視点でも、経済の原理からも、本来なら持続不可能なこの「虚構の繁栄」を支えているのは、トリッキーな金融のメカニズムで、このままではいずれ崩落する運命にあります。その「寿命」を、少しでも長引かせるために、各国にアメリカと同じような道を歩んでもらう必要がある。その具体的な手段として、「規制緩和」「改革」「市場開放」「国際標準」「ビッグバン」などで表現される要求が、突き付けられているわけです。

「グローバリゼーション」を進めて地球がひとつになる、結構ではないか、と思わせるところに「陥穽」があります。その延長上にあるものは、人間性より経済的利益を優先し、経済の規模をどこまでも拡大し続けなければやっていけないという、資本主義経済の致命的な欠陥を、未来の地球に持ち込むことです。同時に、すでに大々的に進行している「巨大資本による地球支配と放縦」を固定化することでもあります。それは全世界に、混乱、摩擦そして不公平を蔓延させることになるでしょう。望ましい地球の未来とは、似て非なるものです。

ここに興味深いデータがあります。98年3月に電通総研が世界6カ国で行ったアンケート調査『目指すべき社会像』の結果です。A「貧富の差の少ない平等社会」と、B「意欲や能力に応じた自由競争社会」との対比が見られます。以下に、ABの数値を示します。この他に「どちらとも言えない」という回答があります。1.アメリカ(A: 13.2%、B: 68.3%)、2.イギリス(23.9、60.0)と、際立った特徴が出ています。これに対して、3.ドイツ(51.0、30.9)、4.フランス(50.0、23.1)、5.スウェーデン(41.1、22.9)です。6.日本(35.9、22.1)となっています。アメリカ人とイギリス人は、アングロサクソンの「系統」です。未来の地球文明を目指して、日本人が手を組むべき相手はこれで明瞭です。

国民のセンチメントとかけ離れた「アメリカ化」の傾向を、行政のレベルになると、助長する「努力」が行われるのはなぜでしょうか。その一つは、「景気」についての誤解です。日本では、「バブル時代の貴重な経験」を踏まえて、消費者が「賢い消費」の「確信犯」になっているので、何をどういじっても、いわゆる「景気が回復」することは起こり得ません(詳細は、このシリーズの「景気はタスマニア・タイガー(1)」と「同(2)」をご覧ください)。すでに8年間も「空鉄砲」を撃ったのだから、「何か違うぞ」ぐらいの気づきがあってもよさそうなものですが、与野党とも「消費のための消費」への足並みは、不思議なほど揃っています。自民党の「所得税の累進率の緩和(レーガンの故知)」、公明党の「商品券減税(地域振興券)」そして共産党の「景気回復のための消費税率引き下げ」など、基本認識はすべて同じです

もうひとつは、国家の安全保障、工業製品の輸出、そして食糧の輸入を、主にアメリカに依存しているため、「NOと言えない(と思っている)日本」になっていることです。もっと根本的には、行政に、資源や環境の制約のなかで、どういう社会を創るかの理念がなく、ただ「景気」がよければそれで良いという観点しかないことです。したがって万事「資本の論理」に振り回され、アメリカの掌の上で踊ることになるのです。問題は、この「不思議な政治状況」が、どこから生まれてくるのかということです。何か「ドライビング・フォース」があるはずです。そうでなければ、これだけの「集団錯誤」が起こるわけがありません。その説明は、後でします。

一方、企業のレベルでも、アメリカ(資本)の世界戦略に完全に嵌まっています。目先の利益にとらわれるあまり、ムーディーズやS&P(スタンダード・アンド・プアーズ)の「企業格付け」に一喜一憂し、見境も無く人員整理をしたり、苦し紛れにアメリカ資本の傘下に入るようなことが、平然と行われるようになりました。洗脳され、手玉にとられて、まさに「理念無き経営」が蔓延しています。この傾向が、ますます拡大しそうな勢いが、みてとれます。雇用の問題は、個別企業の経営姿勢に依存する部分が圧倒的に大きいわけですが、国家のレベルでの対応も、その気になれば可能です。例えば、ドイツの各産業界ですでに採用されており、フランスで最近法制化された、週35時間労働制によるワークシェアリングがあります。いずれにしろ「アメリカ流」では、解決不可能です

これらの状況の「演出者」として、マスメディアの存在を無視することはできません。一般論として、マスメディアの在り方は、読者や視聴者の「嗜好」を反映しています。つまり、犯罪や、事故や、暴力や、スキャンダルが好まれるのは、「自分はその渦中に居なくて安全だ」という、つかの間の満足感と優越感に浸ることができるからです。マスメディアは、その風潮に迎合するだけでなく、積極的に、「楽しさ」を演出しながら大衆の意識を眠ったままの状態に保つことに、多大の「貢献」をしています。そして、現実についての、選り抜いた特定の情報だけを売りつけ、他の現実を握り潰すのです。

こうして、何を信じ何を信じないかを他人(主にマスメディアや行政)任せにする、「操縦しやすい大衆」の「拡大再生産」が行われます。このような状況のもとでは、マスメディアが社会において、特定の状況を「創出」することは、極めて簡単なことになるでしょう。しかし、そもそもマスメディアは、どういう「意図」を持ち、それはどこから生じてくるのでしょうか。それを表面から見た場合の典型として、ルパート・マードックが率いる、ニューズ・グループ(News Group)があります。「巨大資本の地球支配」の事例にもなります。

オーストラリア出身のルパート・マードックは、オックスフォード卒業後イギリスで新聞編集を経験しました。その後、故国で設立したThe Australianを母体として、相次ぐ企業買収によって、今日の「情報帝国」を築き上げました。新聞ではイギリスのThe Timesや最大の日刊紙The Sun、アメリカのNew York Postなど、テレビでは全米に24局を持つFox Broadcasting、映画製作ではFox Filmed EntertaimentsやTwentieth Century Foxなど 、雑誌では全米No1のTVGuideやThe Weekly Standardなど、出版ではHarper Collins Publishers、そしてケーブルテレビと衛星放送では世界9カ国に根を張っています。最近、プロ野球のドジャーズを買収して話題になりました。

マードックは、政治家に積極的に接近することでも知られています。首長にしろ議員にしろ、選挙が絡むとき、いかにマスメディアに弱いものか考えてみてください。巨大企業といえども、企業買収、許認可、そして独占規制の緩和などで政治家の力を必要とします。偶然というべきか、アメリカのFCC(連邦情報通信委員会)は1996年に、テレビの1事業者の視聴者占有制限を、それまでの25%から35%に緩和しました。これと同様の動きが同時期に、イギリスとオーストラリアでも起こりました。マードックの政治的意図は今のところ明確ではありませんが、「大衆の好むものを与えるのが基本、その中心はエンターテイメントだ」という彼の哲学によって、上述の「拡大再生産」に「貢献」していることは間違いありません。

日本にも「和製マードック」が居ます。日本政府は、政府審議会の委員の一部に、マスメディアの代表を当てる習わしになっています。それによって、マスメディアを懐柔し世論操作をスムーズに進める意図が見え見えですが、逆にマスメディアがその場を利用することもあります。マスメディアが中立的だと思うのは、幻想です。或る政府審議会で、マスメディアに弱い学者や評論家の委員を恫喝して、自分の主張を押し通したマスメディア代表がいました。それが、もともと行政が望んだ結論だったとしたら、結局どちらがどちらを利用したことになるでしょうか? 実は、どちらでもなく、両者とも、或る「ネガティブな宇宙存在」たちに利用されているのだとしたらーーー。

この問題の深刻さは、「彼ら」の存在を抜きにしては、とうてい理解困難です。常識では納得できない行動を行政がとろうとし、それをマスメディアが側面援護するのを、不思議に思うことはありませんか。「彼ら」の目的は、地球に混乱を引き起こして、地球人類を支配することです。「混乱」が「彼ら」の最大の「ご馳走」です。そのための「食材」は何でもよく、また「調理法」を問いません。人類よりはるかに発展した知的レベルにある「彼ら」は、人の心を読み取り、気づかれないように操ることにたけています。そして「彼ら」の最大のターゲットは、権力を持つもの、すなわち政治家やマスメディアの関係者ですまた時には、巨大資本の幹部です。権力意識に凝り固まった人間ほど、「彼ら」にとって操縦しやすい存在はありません。これらの人々が、「彼ら」の目的達成の尖兵になっていることは、状況から見て疑う余地がありません。しかし、肝心の当事者は、まったくその認識が無いはずです。「彼ら」は、人の無意識の領域を操作するテクニックを持っているのです。救いは、「彼ら」の餌食になっていない、多数の地球市民がいること。そして、地球に来ている「宇宙存在」は、「彼ら」だけではないことです。

地球は、単なる鉱物の集合体ではありません。「彼ら」は、ガイア(地球生命)の忍耐とその限界を知っています。地球の住人たちが地球を食い物にするよう誘導すること、これが、地球において混乱と摩擦を定着させ増強させる「最強のシナリオ」です。「彼ら」の、この遠隔操作が、例の「集団錯誤」に「栄養」を与え続けているのです。

いま世界を俯瞰すると、目覚めた市民の数が最も多いのはアメリカです。しかし、圧倒的多数は「ドルの海」で漂流しています。それらの市民は、エネルギーとモノにドップリ漬かった生活以外の可能性を考えることができず、現状を手放すことを極度に恐れています。そして「恐れ」こそは、「彼ら」が「おマジナイ」」をかけるとき最高の「触媒」になります。おそらく、「彼ら」の優秀なセンサーが、最初に捕らえたのがアメリカ人だったのでしょう。今やアメリカは、国家全体が、「彼ら」の最高の「草狩り場」あるいは「広大な実験室」になっています

市民がこの状態だから、行政は「推して知るべし」です。国民全体が、現状について「何かがおかしい」という意識に達していません。そして、「地球環境という資源」を搾取する行動に、歯止めをかける必要性などまったく感じていないのです。このまま行くと、アメリカは遠からず崩落します。崩落をキッカケに目覚める、というのもひとつの道ではあります。しかしその時は、アメリカ市民はもとより、地球全体が甚大な影響を被るでしょう。アメリカを崩落させない方法があるでしょうか(このシリーズの「アメリカはどこへ行く?」で、日本政府が今できることを提案しています)。

市民のレベルで日本とドイツは、地球との係わり方が、かなり似通っています。これまでのやり方を変えなければならないという意識が、消費の態様に変化をもたらしています。それが経済を減速させるから、アメリカが要求するように「景気刺激策」が必要だ、と考えるのが行政の方です。こちらもまた、同じ穴のむじなです。西ヨーロッパの大陸諸国と北欧の市民の意識はドイツに近く、イギリス、オーストラリアそしてカナダはアメリカに似ています。「地球市民」であり続けるために、いずれ各国とも日本、ドイツあるいは北欧の意識に近づいてきます。今はそれに至るプロセスです。

個人として、まず注意すべきはテレビです。テレビは、「彼ら」が地球人類の意識を操作する最大の武器になっています。テレビの周波数の中に、マインドコントロールの波動を織り込む技術を持っているので、「彼ら」にとってこれほど「有用な」インフラは他にありません。前述した番組の内容とあいまって、現在の世代全体が「知的自殺」を図っていることをご存知でしたか。もうひとつ大事なことは、自分が常に「主権者」であるという自覚です。政府、学者、そしてマスメディアが、何を言っても鵜呑みにせず、(このシリーズの情報も含めて)すべて自分の感性だけで判断するのが最善です。定期的に自分のマインドの中身を点検することも必要でしょう。「彼ら」の「毒」を取り込んでいないかどうかをーーー。

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[シリーズ第1部「混迷の星」の目次(contents)]

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